業務用ソフトクリームマシンとは?

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アイスクリームやジェラートを外出先で買う場合にはショーケースに保管しているものをすくって提供されるのが一般的ですが、ソフトクリームは注文毎に機械から取り出したものがすぐに提供されているかと思います。ソフトクリームはその性質上、保管しておくことができず作り立ての状態を提供する必要があり、人力でおこなうにはとてつもない労力が必要となるため、ソフトクリームを販売するためには専用の機械が必須となります。今回はその業務用ソフトクリームマシンについてご紹介をいたします。

また不要となり売却したい場合などに、どのような点が買い取り時の査定に影響するのかなどについても併せてご紹介をいたします。

1. 業務用ソフトクリームマシンについて

解説

ソフトクリームマシンはソフトクリームを販売するための機械です。ソフトクリームフリーザーやソフトクリームサーバーとの呼称もあります。代表的な業務用のメーカーとしては「日世」、「カルピジャーニ」、「パナソニック」などが挙げられます。

そもそものソフトクリームの作り方についてですが、ソフトクリームの基となる液状のソフトクリームミックスを冷却しながら攪拌することで、滑らかな個体の状態であるソフトクリームへと変化させます。しかし、作った後は放置すると溶けてしまい、冷却したままだと凍って硬くなってしまうので、ソフトクリームを販売するためには常に最適な状態を保ち、いつでもお客様に提供できる必要があります。つまり、業務用ソフトクリームマシンでは「ソフトクリームの製造」と「ソフトクリームの状態保持」の2つの機能が要求されます。

1. 1. ソフトクリームマシンの構造

仕組みは概ねどのソフトクリームマシンも同じです。マシン上部にソフトクリームミックスを溜めておくミックスタンクがあり、ミックスタンク下部には穴が開いていて円筒形のシリンダーという装置に繋がっています。シリンダーは「ソフトクリームの製造」と「ソフトクリームの状態保持」を兼ねたソフトクリームマシンで最も重要な部分です。さらにシリンダーの先がソフトクリーム取り出し口に繋がっていて、レバーまたはペダルを操作することで製造したソフトクリームを取り出す作りになっています。基本的な製造の流れとしては、

  1. 手作業でミックスタンクにソフトクリームミックスを投入する。
  2. 製造に必要な分のソフトクリームミックスだけがシリンダーに流し込まれ、過剰な分のソフトクリームミックスはミックスタンクに残る。
  3. シリンダー内でソフトクリームミックスの冷却と攪拌がおこなわれ、ソフトクリームになると攪拌が止まり、ソフトクリームは冷却された状態でそのままシリンダー内に留まる。
  4. レバーやペダルの操作によって取り出し口からソフトクリームが取り出される。
  5. 取り出された分でシリンダー内部に空きがでるので、補充するようにソフトクリームミックスがミックスタンクからシリンダーに流し込まれる。
  6. 補充分のソフトクリームミックスがソフトクリームになるよう冷却と攪拌をおこなう。
  7. ミックスタンク内のソフトクリームミックスが不足した場合には、手作業で補充する。

というように、ソフトクリームを製造した後は取り出されて空いた分を順次補充しているといった流れになります。

ソフトクリームミックスが不足した場合には、不足したことを通知する機能がどのマシンにも備わっているので、頻繁にミックスタンクをのぞいて確認する必要はありません。

1. 2. ソフトクリームマシンにおける重要な機能

ソフトクリームマシンでは、ソフトクリームを製造・販売するために下記の3つの機能が重要になっています。

  • 冷却
  • 攪拌
  • 加熱
1. 2. 1. 冷却

ソフトクリームマシン内部に圧縮機や凝縮器を内蔵しており、冷凍庫やエアコンなどと同様の冷媒ガスを用いた冷却機構でミックスタンクやシリンダーを冷却しています。仕組みは同じですが、それらとは違い温度調整はできません。ソフトクリームの硬さは温度によるものなので、硬さの調整はできないのかと思うかもしれませんが、温度調整でなく硬さの調整としてきちんと設定可能になっているので問題ありません。

1. 2. 2. 攪拌

ソフトクリームマシン内部にはモーターが内蔵されています。また、円筒形のシリンダー内部にはダッシャーという螺旋状の撹拌機が挿入されていて、モーターとダッシャーを繋げて回転させることでソフトクリームミックスを攪拌する仕組みになっています。攪拌するにしてもただかき混ぜるのではなく、空気を含ませながら混ぜるようになっています。なぜ空気を含ませるかというと、ソフトクリームは空気の含有量によって舌で感じる滑らかさに違いが出るからです。爽やかさを感じさせたい場合には含有量を多くし、コクを感じさせたい場合には含有量を少なくすることでその特徴をより強調させることができます。この空気の含有率はオーバーランと呼ばれていて、通常のソフトクリームのオーバーランは40%程度です。オーバーランはマシンによって調整できるものとできないものがあるので、購入前に確認が必要です。

1. 2. 3. 加熱

冷却の項目でも挙げたように、ソフトクリームマシンでは冷媒ガスを利用した冷却方法を採用しています。冷媒はある段階で高熱の気体となり、これをホットガスと呼びます。このホットガスを利用して加熱をおこなうことが可能となっています。冷たいアイスクリームなのに加熱する必要があるのかと不思議に思うかもしれませんが、実はとても重要な機能で、下記のように利用されています。

  • 加熱殺菌
  • 食品衛生法により、ソフトクリームの基となるソフトクリームミックスは、68℃で30分間の加熱殺菌か、それと同等以上の殺菌がおこなわれている必要があると定められています。また、ソフトクリームマシンの手順書などには始業時、終業時、一週間に一度の洗浄作業時などでこまめに加熱殺菌することが必ず記載されています。同じタイミングで取り出し口やミックスタンク周りなどをアルコール殺菌することが必須とされているほど、ソフトクリームマシンを扱うにはしっかりと衛生管理に取り組むことが求められます。

  • 解凍
  • 冷却と攪拌をおこない固体となったソフトクリームですが、販売が途切れてしまうようなタイミングでシリンダー内部の動きがなくなると、ソフトクリームが溶けてゆるくなる場合があります。ソフトクリームの状態保持が重要とこれまで言っていたのにゆるくなってしまうのかと思うかもしれませんが、これはソフトクリームが順次販売されて取り出されることを想定した作りとなっているためです。そのようなときには、ソフトクリームを解凍して冷却と攪拌を再度おこなうことで最適な状態へと再生します。また、分解しての清掃作業の際にも、一度解凍作業をおこない液体にしてから廃棄することで清掃が簡単におこなえます。

1. 3. 本体のタイプ

購入する際の目安として大まかなタイプの区分けがあるのでご紹介します。

1. 3. 1. 設置タイプ
  • 卓上型
  • 台上に置ける小型サイズのタイプです。小型な分、冷却能力が低く、時間当たりのソフトクリーム生産数も少なくなるため、小規模な店舗での販売に向いています。

  • フロア型
  • フロアに設置する大型サイズのタイプです。卓上型よりも冷却能力が高く、時間当たりのソフトクリーム生産数も多いため、イベント時や大規模な店舗での販売に向いています。キャスターも付いていて、少しの距離であれば簡単に移動させることもできます。

1. 3. 2. シリンダー数

シリンダーはミックスタンクと一対一で直接繋がっているため、シリンダーの数がソフトクリームミックスのフレーバーを同時に何種類使えるかの数ということになります。卓上型では1~2個で、フロア型では1~3個が基本になります。

シリンダーが2個以上あるマシンでは、2種類のフレーバーを混合したミックスタイプのソフトクリームを作ることができます。仕組みは単純で、ソフトクリームを取り出す際に2種類を同時に排出するだけで、取り出し口付近で上手く合体して1つのラインになって出てきます。隣り合うシリンダーとしか混合することができないので、シリンダーが3個のタイプで、左から、チョコレート味、バニラ味、抹茶味といった構成では、

  1. チョコレート
  2. チョコレート+バニラ
  3. バニラ
  4. バニラ+抹茶
  5. 抹茶

といった組み合わせだけが可能で、チョコレート+抹茶のような端端にあるフレーバーでの混合はできません。

1. 3. 3. 取り出し方法

手で操作するレバー(ハンドル)式と足で操作するペダル式の2種類があります。卓上型はそもそも台上に設置されて足で操作できないため、レバー式のみになります。操作方法が異なるだけで、ソフトクリームの取り出し具合に違いはありません。

1. 3. 4. 冷却方式

ここでいう冷却方式はソフトクリームを冷やすためのものではなく、冷媒ガスを冷却するための方式です。ソフトクリームマシンでは、冷凍庫と同じように冷媒の気化と液化を繰り返すサイクルにより冷気を発生させる仕組みとなっていて、気化している冷媒を液化させるために冷却させる必要があります。冷却させる方式には空冷式と水冷式があります。

  • 空冷式
  • ファンで風を発生させ、冷媒ガスが流れる伝熱管に風を当てることで冷却する方式です。冷たい空気を取り込むための吸気口と伝熱管に当たって熱を持った風を逃がすための排気口が本体表面に開いています。水冷式と比べると低コストでの運用が可能ですが、冷却能力が低くソフトクリームの生産能力も低くなり、熱風の排気によって室内が暑くなりやすいため換気が必要です。

  • 水冷式
  • 水道水を利用して冷媒ガスが流れる伝熱管を冷却する方式です。熱を吸収した水はそのまま排水されて常に冷たい水で冷却されるので、空冷式よりも冷却能力が高くソフトクリームの生産能力も高くなり、室内も暑くなりません。ただし、水道水を使い続けるためにランニングコストが高くなってしまいます。

1. 4. 押し出し式のソフトクリームマシン

ソフトクリームマシンの類ではありますが、これまでに説明したものとはまったく異なるソフトクリームマシンです。ワンショットタイプとも呼ばれ、アイスクリームを専用パックに入れて-10℃程度で保管しておいたものに、圧をかけて押し出し、ソフトクリームのように成形するマシンです。そのため、実際には取り出されるのはソフトクリームではなく若干柔らかめのアイスクリーム程度のもので、食感も作り立てのソフトクリームとは異なるため、ソフトクリームだと思って食べた人ががっかりすることも多いようです。マシン本体の仕組みはアイスクリームのパックに圧をかけて押し出すだけなので、コストが安く清掃が簡単なことがメリットです。

1. 5. 業務用以外のソフトクリームマシン

一般用のソフトクリームマシンというものが基本的にはありませんが、類似するものとしてソフトクリームメーカーといった名称で扱われているものがあります。ただし、自身に冷却機能はなく、冷却するために専用の器を事前に冷凍庫で長時間冷却しておくといった手間が必要になります。また、ソフトクリームの状態保持もできないため、ソフトクリームメーカーを業務用に使用することは考えないほうがよいでしょう。

2. お手入れのポイント

お手入れ

せっかく購入した厨房機器はやはり長く使い続けたいところ。お手入れをすることで長持ちしますので、そのポイントをご紹介いたします。

2. 1. 手順書通りの定期清掃

ソフトクリームマシンの手順書には、毎日のアルコール清掃と、1週間毎の分解洗浄が記載されているかと思います。衛生面においても必須となりますので手順に沿って清掃してください。

2. 2. エアフィルター

水冷式では不要ですが、空冷式は吸気をおこなう関係上、ホコリや汚れを防ぐためのエアフィルターが付属しています。フィルターの詰まりは冷却能力の低下に繋がりますので、1週間に1度は清掃してください。フィルターの清掃の仕方については、下記の記事でご紹介をしています。

関連記事:業務用冷蔵庫とは? / 2. お手入れのポイント

3. 中古買取時のポイント

買取

中古厨房機器を取り扱うミツギ厨機が買い取りの際に注目するポイントをご紹介いたします。ご紹介する点の状態が良ければ査定時の評価が高くなります。

3. 1. 外観

大きな傷、へこみ、錆などがあるとマイナス査定となってしまいます。汚れが目立つのもマイナス査定となってしまうので査定の前に掃除しておくと良いでしょう。

3. 2. ミックスタンクとシリンダー内部の状態

お手入れのポイントでも挙げた手順書通りの定期清掃を怠ると、ソフトクリームミックスの脂肪分などが固まって汚れとして付着してしまい、それが残ったままだとマイナス査定となってしまいます。この汚れはなかなか落ちないので、定期清掃はしっかりとおこないましょう。

3. 3. 部品の不足

ソフトクリームマシンは分解可能な部品が多く、中古買取に出されるときには部品が不足していることが多いです。もちろん部品が不足しているとマイナス査定となりますので、しっかりと残しておきましょう。

4. おわりに

飲食店や行楽地でよく見かけるソフトクリームを販売するための業務用ソフトクリームマシンについてご紹介をいたしました。本記事がこれからソフトクリームマシンを購入する方などへのご参考になれば幸いです。

また、ミツギ厨機では中古厨房機器の買い取りを随時おこなっておりますので、売却をご検討の方はお気軽にお問い合わせくださいませ。

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著者

比留間 豊

ミツギ厨機現代表。中古厨房機器の買取や販売に以上に亘って携わっており、その中で培ってきた知識や経験に基づいた厨房機器に関するお役立ち情報を発信してまいります。